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1997年の原油価格は、アジア通貨危機に伴う経済の低迷により10ドル前半と下落傾向にありました。99年にはアジア経済の回復やOPECの生産調整により、年末には20ドルを超え、2000年には30ドルを超えてきました。要因として原油増産と石油製品生産とのミスマッチ、アメリカの在庫水準の低さ、先物市場の投機的な動きもあると言われています。
2001年9月のアメリカのテロ事件以降、20ドルを割りました。テロの影響で経済活動が鈍化し原油価格が低迷したためです。
2002年に世界第5位の石油輸出国ベネズエラのストライキを受け、翌年2月に30ドルの高値をつけました。同年3月にイラク戦争が始まると、23.5ドルまで下がりましたが、 2004年後半、OPECの生産余力の低下、イラク情勢泥沼化に伴う原油生産・輸出の遅れ、ベネズエラの政情不安、ロシア最大の石油会社ユコスの経営悪化などが供給不安を招き、原油価格は上昇傾向を見せ、2005年に入ると30ドル後半から40ドル前半まで高騰しました。そこにヘッジファンドなどの巨額な投機資金が流入し、相場の振幅を通常異常に拡大しています。
アメリカ石油大手の精製施設が先日のトラブルにより操業を停止している事で、アメリカのガソリン需給に対する不安が再燃しています。これからの夏場のドライブシーズンにかけて本格化するアメリカのガソリン需要に対して、アメリカのガソリンの在庫が予想を大幅に下回っているからです。そのためガソリン需給がひっ迫するとの懸念から、25日のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)での価格は、1バレル=56ドルをつけました。
また中国、インド、ブラジル、ロシアの経済成長に伴い、需要が急速に伸びている事も要因となっています。特に中国は、エネルギー需要の7割を石炭に依存してきましたが、急速な工業化と電力不足を解決するために、石油の純輸入国となりました。それ以降、原油の輸入量は拡大を続け、近年では石油火力発電所の新設を行っています。
ブッシュ大統領は25日、世界最大の産油国であるサウジアラビアに対して、世界的な原油高の抑制へ向け原油増産の要請をしました。しかし、最近の原油高騰の背景には、中国やインドの高成長があるため、サウジアラビアの増産が原油価格安定に直ちには繋がりにくい状況となっています。
過去のオイルショックは、産油国側の供給不安によってもたらされましたが、今回の原油高騰は消費国側の需要増大不安によって生じているともいえます。こうした需給の構造変化は、石油にとどまらず、天然ガス、鉄鉱石、農産物にまでおよび、国際関係にも影響を与えています。 |
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*先物取引
一定期日、一定条件で、今決めた価格で取引すること。今後の価格変動を回避(ヘッジ)できる。例えば、価格が安くなれば損を回避できるが、価格が高くなると得られるはずの利益を得られなくなる。 |
(2005.4.26) |
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